ウエルビーイング
MIKIファニット代表の古庄美樹です
私の母はいまだに「暗くなりよるけん早よ家に帰らんね」と私に必ず言います。そんな母に先日会った帰りに私が「また来るね」といつものように言うと「いつくると…?」と小さい声で聞き返されました。そんな母がなんだか急に小さく見えて、思わずグッときてしまいました。
現在私は九州大学大学院でユーザー感性学を専攻し、ユーザーの感じ方を軸にソーシャルデザインしていくことを学んでいます。 シニアや介護の論文など探す中で、60代以上の親と子の関係について興味深いデータがあったのでシェアします。
資料1:「親のいま」に対する 親子2世代の意識の違い」
資料2:親子の程よい距離感について
親の世代との関係をどう考えるかと見ていましたが。思えば私は50代。昭和の女。
私自身が、我が子や、ひょっとしたら周りの20代30代スタッフにもこう思われ始めるてるんだ」と思いました。
株式会社ダスキンが2022年に、60 歳以上の親を持つ子世代とその親世代 2000人に「親の今について」意識調査によると、
①親世代の85.6%が自分の老いを感じている 子どもも親の老いを感じている。
②子世代の38.4%はその現実に向き合えていない
③離れて暮らす子どもたちは親と会った際に、見た目の変化に70.4%が気づく。
④親は97.8%は子どもの負担になりたくないと感じている。
⑤親のこれからについて子どもと真剣に話さない理由は、「何を話していいかわからない」が71.6%。
①②親世代の85.6%が自分の老いを感じているも、子世代の38.4%がその現実に向き合えずにいます。
③離れて暮らす子どもたちは親と会った際に、しわや白髪など「見た目の変化」には70.4%が気づく。
私が気になったのは見た目の変化に比べると、「生活が変化」への気づきは少ないこと。体調の不調や食事量や外出などの頻度が減ったなどの変化は、フレイルに直結してしまうので親とよく話す観察することは必要です。
④親の97.8%は、子どもの負担になりたくないと感じています。別居する親が子どもと会いたいと感じるのは52.8%で、子どもは約70%が会いたいと感じている。
⑤親の「これから」について、親子であまり話し合わない理由として、子どもは「何を話していいかわからない」「まだ健康だから」が約70%。親は「迷惑をかけたくない」「まだ健康だから」「子どもを頼ると想定していない」が上位にあります。
このデーターを見て、私も思い当たるのです。つい先日、膝を怪我をしたものの、多忙な息子夫婦にはじめ「SOS」を出せずにいました。「迷惑をかけたくない」との思いでした。しかし息子から孫の子育てサポートの依頼を受け、できない現状を話すと、逆に病院に付き添ってくれました。しかも、行き先はかつて息子が部活で骨折し、その手術をお願いしたスポーツドクター。付き添いの立場が完全逆転で、年齢重ねたことをつくづく感じました。
その後で、杖なしで台所にもどうにか立てるようになったので、息子家族にお惣菜を作って渡せた瞬間、私は「良かった役に立てて」とホッとしました。その時、思い出したのは、おばあちゃんの口癖。私がまだ20代の頃。90歳越えて寝たきりのおばあちゃんが「な〜んもしてやれることがなかねえ」 と言ってました。
人はいくつになっても「役に立ちたい」と考えるんだな。ましてや世代が上の方からすれば、今までの【世話する側】だった子どもや孫に、いよいよ【される側だけ】になった時、自分の老いを感じる、ステージが変わるのかもと体感しました。
親が子どもと望む関係性として、「いつも一緒に生活したい」から、「ときどき会って食事や会話をするのがよい」とする「程よい距離感」の関係性を望む人が過半数を超えています。(2015年内閣府調査)先程親の「これから」について話し合わない理由として、親は「迷惑をかけたくない」「子どもを頼ると想定していない」が上位にありました。
親子がそれぞれのライフスタイルを尊重しながら「程よい距離感」で支え合えることを「近居」と言います。. リアルの「近さ」がもたらす安心と自立のバランスとして、理想とする方も多いライフスタイルです。「第 8 回 高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(2015 年 )でも、親が望む親子関係として、「いつも一緒に生活したい」から、「ときどき会って食事や会話をするのがよい」とする「程よい距離感」の関係性を望む人が過半数を超え、「たまに会話するでよい」とクールな関係性を望む人も1割のデータもあります。
スウェーデンは福祉充実で「いつも一緒に生活」が3.7%の数字です。日本でも、2000年に介護保険制度の施行により、親世代が、否応なしに自分ごととして老後を考えるきっかけになったからという説があります。。
世の中にはいろんな親子関係があり、理想の親子像・親子の会話が画一的にできるかと一概には言えないと思います。いわゆる「終活」と思うと、「まだ若いのに」と親が嫌がるかもしれません。そのような時はなぜ嫌なのか聞くことから始めるのもいいそうです。 たまに会う関係ならば、近況報告で互いのことを話しはじめる事から「ところで…」と聞き出すといいかもしれません。できれば親からだと話しやすい。経済的なことも含め今後の生活について、何気ない話からはじめられたら…。
急に自分の今後を聞かれても、何を考えいいか混乱するかもしれません。自分の理想の過ごし方を気さくに人と話せたら。
次第に自分の考えの整理となり、何を大事にしてるのか、ぼんやりと霧がかかっている自分の将来が見えて来るかもしれません。そう思い、まずは自分のため、そして何か役に立てたらと終活ガイドの資格を取りはじめました。
【参考文献】
1)「親のいま」に関する親子2世代の意識調査 2)藤崎宏子「高齢者と子どもの交流―意識と実態にみる日本の特徴」、内閣府『平成 27 年度 第 8 回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果』。 https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h27/zentai/index.html 3)澤岡詩野「子供との近居を希望する高齢者についての分析」、内閣府『平成 30 年度 高齢者 の住宅と生活環境に関する調査結果(全体版)』。 https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h30/zentai/index.html